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国立科学博物館で学ぶ物理学 <数値計算法>

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[T]微分方程式の数値解法の概要

物理方程式では、一般的に2階微分方程式を扱うので、簡単のため以下では2階微分方程式の数値解法について説明する
常微分方程式の数値解析に対し最も多く用いられる一般的方法は離散変数法と呼ばれるもので、@オイラー法 Aルンゲクッタ法 などがあります。 その違いは関数をテーラー展開したときの微少量の次数をどこまで取るかに拠ります。Aは4次の微少量まで取るので@より精度が高く、多用されています。
一方、偏微分方程式式に対し最も多く用いられる一般的方法は、B差分法と呼ばれるものすが、常微分方程式に使用することも出来ます。

3つの方法の比較は下図のようになります。

オイラー法(赤)は誤差が短時間に現れるが、ルンゲクッタ法(赤紫)・差分化法(青)はいずれも精度よく解が得られている。


[U] オイラー法

(a)従属変数が1個の1階常微分方程式
     
の場合、現在値 xiに対し、冲 後の値 xi+1は、単純に積分した値を加えるだけです。
     

(b)従属変数が1個の2階微分方程式
     
の場合は、これを以下のような1階の連立常微分方程式
     
     
に置き換えて、夫々の式に対し1階常微分方程式と同じ操作を行います。
     
     
これを単純に繰り返すだけの方法です。極短時間の計算では、この方法で十分でしょう。


[V] ルンゲクッタ法

(a)従属変数が1個の1階常微分方程式
     
の場合、
     
     
     
     
として、冲 後の値xi+1を次式で求めます。
     

(b)従属変数が1個の2階微分方程式
     
の場合は、[T](b)と同様に1階の連立常微分方程式
     
     
に分け、上の1階微分方程式の解法を適用します。すなわち、
     
     
     
     
として、冲 後の値vi+1、xi+1を次式で求めます。
     
     

(c)従属変数が2個の2階連立微分方程式
     
     
の場合、これを更に分けて1階の連立常微分方程式

           
           
に分け、上の1階微分方程式の解法を適用します。すなわち、
     
     

     
     
     
     

     
     
     
     

     
     
     
     

として、冲 後の値xi+1を次式で求めます。
     
     
     
     


[W] 差分方程式による解法

(a)常微分方程式 (多変数の従属関数であれ、高階微分方程式であれ計算法は同じ)
     
     
     
このような場合、x について言えば、現在値をxi、時間冲 前の値をxi-1、時間冲 後の値をxi+1として、dx/dt、d2x/dt2を、次のように差分化します。
     
     
y,zについても同様で、これらを2階微分方程式に代入して得られる xi+1, yi+1, zi+1 に関する連立 方程式を解けば、以下の形で解が得られます。
     
     
     
この計算を繰り返せば、x,y,z の時間変化が得られます。
なお、速度の差分化には、上に述べた中央差分ではなく、次のような差分を用いて簡単化することもあります。精度との見合いで選択する必要があります。
     

(b)偏微分方程式 例えば
     
の場合、(x,y)面を升目に分割し、
        
     
     


[X]数値計算例

(a)単純振り子
この方程式の厳密解は、初期値θ=θ0とすると、
     
     
      3つの方法の比較は下図のようになります。

オイラー法(赤)は誤差が短時間に現れるが、ルンゲクッタ法(赤紫)・差分化法(青)はいずれも精度よく解が得られている。
敢えて言えば、振幅の精度は極めて高いが、周期については誤差は小さいとは言え、振幅の精度ほどではない。

(b)フーコーの振り子

フーコーの振り子の近似方程式は、
     
     
この方程式の厳密解は、
     

解析解(青)と、ルンゲクッタ法<W(c)に順ずる>および差分法による解の比較を行ったものが右図である。
ルンゲクッタ法・差分法は共に同じような解を与えるが、双方とも、振幅の精度はまずまずといえども周期の精度が 悪く、折り返し点が青丸のように動かない筈のところ結構目立つ変動を見せている。

2変数以上の常微分方程式の数値計算には、ここに紹介した以外の高度な手法が必要となる。   

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