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国立科学博物館で学ぶ物理学 <回折>

[概説] 解析結果 キルヒホッフの積分表示 回折強度 矩形開口部 円形単一開口部 フラウンホーファ回折とフレネル回折 フーリエ変換とフラウンホーファ回折 数値計算 [理論解析] 物理法則 方程式 国立科学博物館で学ぶ物理学 ホーム

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[T] 回折

結晶構造の決定にX線回折法という技法が用いられていますが、左図はその根本の原理である光の回折を見せる展示物です。
展示物下部には、赤色レーザーの光源があり、天井に置かれたスクリーンに向かって垂直上方に光が出ます。その途中には、回転テーブルがあり、テーブル上には、幾つかの回折格子があり選択できるように なっています(テーブルは図示していません)。回折格子は、スリットだけからなる格子(1次元格子)および交差するスリットからなる格子(2次元格子)が用意されています。2次元格子には格子間隔の間隔の異なるものが幾つかあります。
左図は2次元格子での回折状況を図示しています。2次元格子子では、中心を通る縦横の軸に沿って濃い点が規則的に現れます。更には、それらの濃い点を通る格子状の位置にも薄い点が現れます。 詳細に見れば、これらの濃い点も一様の濃さではなく中心から遠ざかるにつれ薄くなっていきますし、濃い点の間にも極めて薄いが点があるのです。

右図は、1次元格子による回折の原理を表しています。青い線は、2つのスリットからの光だけの場合の回折を示します。2本の青い線は、スリットの位置では位相が同じですが、点Pでは、光路差儿 が スリット間隔d、スリットから点P方向の入射光に対する角度θにより、儿=d sinθとなります。光の波長を λ 、適当な整数をn とすると、
     
の関係を満足する時、点Pでは、波の山と山が重なりスクリーン上に濃い点が現れます。これが回折の基本原理です。

右図の赤い線は、多数のスリットからの光の重なりがスクリーン上の他の位置での重なりより強くなる点Qに集まる光線を表しています。
この濃い点の間隔Dは、m本の多重スリットからスクリーンまでの距離をLとすると、
     
となります。省略していますが、前記のとおり、このDの間にも多数<(m-2)本>の薄い点があります。mを多くすると、間の薄い点はますます薄くなり、濃い点が浮き彫りになり、Dも大きくなるので、dを精度よく測定すること が可能になります。

この関係式から分かるように、格子間隔dが大きいとDは小さく、スクリーン上では点が中心に集まった状況になります。格子間隔dが小さくなるにつけDは大きくなり、スクリーン上ででは点が広がった状況になります。


理論解析結果

(a) 理論による回折像(メッシュ効果、コントラストの差、回折強度)

下図左端とその次はメッシュ(格子間隔)が粗いか細かいかの差で、細かくなると広がります。展示物はこんな風に見えます。3番目は2番目の図のコントラストを弱めたもので、明るい輝点の間にある薄い点状の像 <(開口部の数−2)ヶ>を見えるようにしたものです。右端の図は、強度分布を示しています。赤(Ip)が回折格子の強度、緑(sinc)が1つの開口部による強度分布です。緑の分布は開口部の幅が小さいほど 広がります。

回折格子(開口40μ間隔50μスクリーン幅1m位置3m) 回折格子(開口8μ間隔10μスクリーン幅1m位置3m) 回折格子(開口8μ間隔10μスクリーン幅1m位置3mコントラスト弱) 回折格子(開口8μ間隔10μスクリーン幅1m位置3m横方向強度分布)

(b) 数値計算による方形開口部によるフラウンホーファ回折(単色光 および 白色光)

単色光2次元格子回折像および白色光2次元格子の回折像の計算結果を以下に示します。
単色光2次元格子回折像を見れば、濃い点の間にも薄い点が多数あることがよく分かると思います。白色光の回折像は図示の通り波長に応じて色づきます。

単色光2次元格子回折像(垂直入射/開口部0.5μ/間隔5.5μ) 白色光2次元格子回折像(垂直入射/開口部0.5μ/間隔5.5μ) 白色光2次元格子回折像(垂直入射/開口部2μ/間隔10μ) 白色光2次元格子回折像(斜め入射/開口部2μ/間隔10μ)

(c) 数値計算による方形開口部によるフラウンホーファ回折とフレネル回折

下図は、方形開口部(1mm×1mm)による回折像および回折強度のスクリーン位置による変化を示しています。(像および黒線での強度分布は数値積分 による結果です。黄色線での強度分布はフラウンホーファ回折理論計算結果、赤紫色線での強度分布はフレネル回折理論計算結果です。)
開口部近くでは、開口部による像はほぼ開口部の形をしています。これは日常感じている光です(これがフレネル回折と言われるものです)。開口部から離れ るに従い像は徐々に広がりを持ち始め格子状の点状の像となります(これがフラウンホーファ回折と言われるものです)。しかし、遠く離れるに従いスクリーン での強度が弱くなるので、日常目視でこの格子状の点状像は意識されません。国立科学博物館展示物は、開口部がはるかに小さく光源強度が大きいので これらを目視で実感できるのです。


[U] 回折理論

(1) 関連する物理法則

使用する式はMaxwellの方程式のみであるが、Maxwellの方程式から導かれる重要な方程式を以下に記す。

ベクトルポテンシャルA、スカラーポテンシャルφを導入し、BEを、
         
         
と置くと、Maxwell方程式4式中、divB=0 および rotEB/δt=0 は自動的に満足される。

今、A、 φ が、以下のローレンツ条件
         
を満足するならば、Maxwell方程式の残り2式、すなわち rotHD/δt=j および divD=ρ から、A、φは、次の2つのポテンシャルの波動方程式を満足しなければならない。
         
         
スカラーポテンシャルに関し、φ=exp(-iωt)・ψ(r) とおくと δ2φ/δt2=−ω2φ であるから、上式は、
         
ρが点電荷であって、原点のみにある場合、ディラック関数δ(r)を用いて書き直すと、形式的には次のHelmholz方程式となる。(但し、ρ/ε0を1として省略した)
         

                        <注>Helmholz方程式についての厳密な誘導は専門書を見ていただくとして、大胆・簡略に、
                           「電荷の無い場ではωで振動するならば光源である点電荷ρもωで振動している筈で、
               ディラック関数δ(x)=1/(2π)∫-∞ exp(ikx)dk を用いて、
               ρ/ε0∝exp(-iωt)・δ(r)と置けるからだ」と説明すれば分かり易いだろうか。
この方程式の意味するところは、
         
         

Helmholz方程式の素解として、点電荷の位置以外では、次の球面波となる。(この解は「Maxwell方程式」にも示しているので参照してください)
         
従い、φは次の形式を有する式で表される。
         

尚、静電場すなわちk=0の場合の式をPoisson方程式と言い、その解は、Helmholz方程式の解でk=0と置いて、φ=1/r となる。(これは、静電場 ie クーロン場のポテンシャルである。)

考えている場に、電流 j が無ければ、電場Eは、波動方程式から求めたφを用い、以下のように表される。
         

(2) キルヒホッフの積分表示

キルヒホッフの積分表示とは、ホイヘンスの原理の数学的な表現を与えたものである。
<注>以下では波動関数はすべて時間項を除いた振幅項のみで表されている。

光源Qによる波動関数ψに対し、観測点Pでのψ(P)の値を、Pを囲む閉曲面Sの上でのψを用いて、次式で表すことが出来る。

         

これをキルヒホッフの積分表示という。

<キルヒホッフの積分表示の導出>
一つは純粋に数学的なグリーンの定理とよばれるもので、右図のような閉空間(閉曲面S内部)内で定義される2つのスカラー関数ψ、φについて、
         
これを閉空間で積分し、ガウスの定理 ∫sAndS= ∫vdivAdvを使うと、
       
今、ψを光源Qによる球面波ψ=(1/R)・exp(ikR)、φを観測点Pに収束する球面波φ=(1/r)・exp(ikr) と考える(収束波であるから時間は逆行し、時間項はexp(iωt)である)と、閉空間に光源Qもしくは収束点Pを含むかどうかで、
         
         
であったから、この2式とφ=(1/r)・exp(ikr)を上の式に代入すると、キルヒホッフの積分表示を得る。(<注> ∫-∞ ψδ(r)dV=ψ(0)=ψ(P) )

(3) 観測点での回折光の波動関数

遮蔽物にあけた開口部による光の回折を考えるにあたり、前説(2)でのべたキルヒホッフの積分表示を適用するのに、閉曲面Sが遮蔽物に対し光源Qの反対側にあることを考慮し、次のように仮定(キルヒホッフの近似)しよう。
         @ 積分にたいしゅる寄与は開口部からのものだけを考える。
         A 開口部でのψとして、遮蔽物のないときの値を採用する。
こうすると、キルヒホッフの積分表示の式は、
         
ψ=ψ0・(1/R)・exp{-i(ωt -kR)}であるから、▽ψ=ψ0exp(-iωt)・▽{exp(ikR)/R}である。
また ▽{exp(ikR)/R}={ikexp(ikR)/R-exp(ikR)/R2}{-R}であるが、R が波長 λ=2π/k より大きいところで考えるので、この式の第2項は第1項に対し無視できる。▽{exp(ikr)/r}も同様に扱えて、上式は、次のように書き換えることが出来る。
         

特に開口部の大きさがr、Rに比し小さい場合は、開口部面内の任意の位置に座標原点をとり、原点からの開口部面内の位置ベクトルを ξ として、
         
         
と置くと、観測点での回折光の波動関数ψは、最終的に次式のようにも書ける。
         

垂直入射光の場合は R0/R0=-n、遠方光源(平行光線)の場合は R0/R0ξ=ξcosα(α:開口部面法線と入射光のなす角)などの条件を加えればよい。


[V]理論 解析

ここでは、入射光線が平行光線の場合につき、開口部の形・開口部の数・波長(単色光、白色光)、入射角(垂直、斜め)の幾つかの条件の組み合わせにつき論ずる。

(1)平行垂直入射光線の回折

平行光線(遠方光源)の場合の回折光の波動関数は、(R/R)・n=-cosφ(φ:入射角、右下図参照)、R=R0であるから、積分項以外をCとおくと、
         

(a) フラウンホーファ回折

@ 矩形開口部

右図のように、原点Oを四角形開口部の隅にとり、開口部を(x、y)平面とする。また、入射光は(y、z)平面内にあるとする。x、y、z軸の単位ベクトルを、e1e2e3として、
         
         
         
         
とおくと、
         
         
であるから、
         

垂直入射の場合、φ=0であるから、
         
更に、垂直に進行する光に対しては、cosθ=1(L/r=1)とおいて、分子のrを積分の外に出して、
         

<単一開口の回折>

観測点を(x、y)とし、開口部を xh=-a〜a、yh=-b〜b として、a,bがLに比し十分小さい場合、2次の微小項xh2、yh2を無視して、
         
であるから、
         
         
         
最終的に、フラウンホーファ回折の波動関数は、
         
sinc関数(cardinal sine) ie sinc(x)=sin(x)/xを用いると、
         

回折光の強度 Ipは、波動関数の2乗(ψが複素数ならψの複素共役数をψ*としてψψ*)であるから、
         




単一開口による回折像および回折強度の計算結果を示すと、右上図(方形開口)のようになる。

右下図は、x軸方向の回折強度分布を示したもので、横軸は、sinθ=x/Lを用いて、kasinθとしている。縦軸 I(θ)は、

        I(θ) =1 (極大値)                         at   θ=0
        I(θ) = 0                                  at   sinθ= λ / (2a)
        I(θ) = 1.43π (第2の極大値)            at   sinθ=1.43 λ /(2a)
        I(θ) = 2π                                at   sinθ= λ / a
 








<多重開口の回折>

開口部が規則的に間隔wx or wy (=開口部幅+閉口部幅)で nx 、 ny 個配置されていて、上記のような近似ができる場合は、
         
において、xhをxh+wxp(p=0〜nx-1)、yhをyh+wyq(q=0〜ny-1)と置き換えて、
         
従い、
         
多重開口部全体の幅も、Lに比し十分小さいと仮定できる場合は、積分はどの開口部でも同じであるので、積分項をΣの外に出して、多重開口の波動関数ψnは、
         
ここに、ψs は、前項の単一開口について求めたψであり、次式で表される。
         
Σ項内のexpは等比級数であるから、i=0〜(n-1)に対しΣexp(iθ)={1-exp(nθ)}/{1-exp(θ)} となるが、オイラーの公式 exp(θ)=cosθ+isinθ を使って整理すると、
         
ただし、γx、δxは、
         
同様にして、
         
最終的に、多重開口の波動関数ψnは、次の式で表される。
         
従い、観測点での強度 Ipnは、
         

単色光の回折像(右図)を得るには、絶対強度は興味がないので C3=1 として計算すればよい。また白色光の回折像を得るには、C3∝k=(2π/λ)であるので、 C3=(1/λ) と置いて各波長に対する強度の和を計算し、そのスペクトルから色表現を行えばすればよい。


以上の式から、多重開口の輝点は、以下の条件を満たすときであることが分かる。
         
すなわち、多重スリットの場合の輝点の間隔Dは、スリットの間隔をdとして、次式で与えられる。
         

また、多重開口の場合の輝点の2次元配列は、n,mを任意の整数として、次式で与えられる。
         

ここでいう輝点(主極大)の位置は、x方向では、x=nDとなりますが、開口部の数nxが違っても同じ位置に現れ、その間に現れる弱い輝点(副極大)の数は (nx-2)個(右上の図を見てください。この図はnx=10の図です。主極大の輝点の間に8個の副極大を見ることが出来ます)で、 nxが大きいほど暗くなり、主極大の輝点がよりシャープになります。


A 円形開口部

ここでも、垂直入射で、観測点へほぼ垂直に進行する場合を考えるので、
         
開口部が円形であるので、円の中心に原点を置き、円筒座標(ρ,φ、z)を用いると、dxhdyh=ρdφdρである。また、Lに比しρ、xが小さい場合、
         
であるから、x/L=sinθとおくと、
         
ここで、変数変換 kρ sinθ=u を行い、円孔の半径を a とすると、
         
ベッセル関数 Jn
         
を用いると、
         
単色光の観測点での光の相対強度Ipは、係数を省略して、次式のようになる。
         
回折図は右図のようになる。


(b) フレネル回折

矩形単一開口、垂直入射波で、ほぼ垂直に進行する場合の、フラウンホーファ回折との違いを簡単に紹介しておこう。
観測点を(x、y)とし、開口部を xh=-a〜a、yh=-b〜b として、a,bがLに比し同等の場合、2次の微小項xh2、yh2は無視出来ず、
         
ここでも、垂直入射かつ観測点へほぼ垂直に進行する場合を考え、
         
xhの積分のみ取り上げて変形すると、
         
ここで、変数変換ω={(k/(πL)}1/2(x-xh)を行うと、cos{k(x-xh)2/(2L)}=(π/2)ω2、dxh=-(πL/k)1/2dωであるから、 積分範囲がω=ω1〜ω2(xh=-a〜a)であることを考慮し、
         
ここに、C(ξ),S(ξ)は、以下に定義されるFrenel積分である。
         
         
これを用いると、
         
y方向も同様にして、' を付すと、係数を簡略化して、
         

なお、Frenel積分には下記展開式があるが数値の桁数が多く|x|<5位までしか計算できないため、数値積分によるほかの方法がない。
         
         

矩形開口部(幅1cm)に垂直に入射する単色光が、3m離れた観測点に描く回折像を下図に示す。フレネル回折は、波長に比し大きな開口部を通過する光が 比較的近い位置()に描く回折像で、通常感じる光の通過 すなわち開口部とほぼ同じ形状の明るい像を作る。
      




(2)平行斜め入射光線の無限遠方観測面での回折

ここでは、平行入射光線(遠方光源)による、無限遠方観測面での回折を考えよう。観測面が無限遠方と考えられる場合、(r/r)・n=cosθ(一定)と置くと、 前項(1)冒頭に記した回折強度は、(cosφ+cosθ)が積分の外に出せて、
         
この場合、1次元で考えると、r=r0-(sinθ・wx・p)-sinθ・xh、R=R0+(sinφ・wx・p)+Bsinφ・ xhと表され、 前項(1)(a)<多重開口>で見た式と同様になるので、その回折強度は、x/Lを(sinθ-sinφ)と置けばよいことがわかる。
そこでも見たように、回折強度Ipの主極大は、sin{kwx/(2L)}=nπの時であったから、今考えている場合の回折条件は、 上と同様に、x/Lを(sinθ-sinφ)と置いて、
         
すなわち、一般的な表現として、格子間隔d(=wx)で表すと、回折条件は、以下の式となる。
         
0次の回折(n=0)は、sinθ-sinφ=0すなわちθ=φのときである。

x線回折のように、結晶格子を構成する原子に属する電子による散乱を受け反射する場合は、入射光は、法線に対し対称の位置に光源があると見なせるから、φは-φとなる。従い、x線回折の0次の回折は、θ=-φのときとなるから、sinφ=-sinθゆえ、
         


これまで小難しく論じてきたが、輝点の位置だけについて言えば、「開口部からは全く同じ光線がでるとして、開口部間の光の山と山が一致すれば明るくなる」と言うことさえ分かれば 上記の2つの回折条件は簡単に導くことが出来る。
多重スリット(p=1〜N)の場合、1番目を基準にして、p番目のスリットから光の光路差は决=(p-1)(x/L)dであるから、観測面での光の振動ypは,
         
三角関数の公式 sinαsinβ={cos(α-β)-cos(α+β)}/2を用いれば、
         
光の強度Ipは、振幅の二乗であるから、時間 t すなわちθを含まない項を考えて、以下のように求めることができる。
         
これは、これまでに詳細に説明した結果と同じであり、輝点の位置は、sin(φ/2)=0の時、ie φ/2=nπ ie x=nλL/d であることがわかる。但し、輝点が中心から離れると光の強度が小さくなるなどの情報は 与えてくれない。




(3)一般的な回折・数値計算

一般的な回折は、解析的に求めることができなので、以下に再記する回折条件式を数値解析で求めなければならない。
         
光の強度Ipは、ψの共役複素数をψ*として、Ip=ψ・ψ*であるから、 z=z1・z2(すべて複素数)のとき、数学公式より、z=z・z*=(z1・z2)(z1・z2)*=(z1・z2)(z1*・z1*) =(z1・z1*)(z2・z2*)、|z|=|z1|・|z2|であることから、積分項をSとすると、
         
R=R0+sr=r0+ss=(ξ、η)と置き、dA=刄フ刄ナとして、
         
であるから、光の強度Ipは、dA=刄フ刄ナ一定の場合、積分項の係数のうち k=2π/λ に含まれる λ のみを残し、
         

この式に従いひたすら計算させるだけで光の強度を求めることが出来る。白色光の場合は、各波長λで強度を計算し、そのスペクトルから色表現を行えばよい。




[W] フーリエ変換とフラウンホーファ回折

前節[V]で示したフラウンホーファ回折は、フーリエ変換の形をしており、フーリエ変換で体系化することが出来る。以下に簡単に紹介しておこう。

(1) フーリエ変換

フーリエ変換とは、以下の変換を言い、例えば ξ を座標、pを位相と考えれば、座標で表された波の形f(ξ)を関数F(p)に変換する操作であり、F(p)はf(ξ)がどんな 位相の分布になっているかを表す。
         
その逆変換は、次のように表される。
         

(2) 1次元フーリエ変換と逆変換

右図のように f(ξ) が ξ=-a〜a の範囲の矩形パルス
         
の場合、観測点xでの位相は、p=kx/Lに対して、
         
         
すなわち、観測点xでの位相分布(正しくは位相差の積分値の分布)G(x)は、
         

観測点での強度分布がG(x)であるとして、開口部がどのような形状・配置f(ξ)であるかは、フーリエ逆変換を行うことにより知ることが出来る。
今、G(x)=2sin(ap)/p のとき、フーリエ逆変換は、
         
複素積分は、
         
であるから、
         


(3) 回折理論とフーリエ変換

回折理論[V]で述べた、平行垂直入射光が、開口部に垂直に進行する場合の回折強度は、次の式で表された。
         
ここで、r は、ケースにより以下のように近似した。

                @ フラウンホーファ回折(単一矩形開口部)      
         A フラウンホーファ回折(多重矩形開口部)      
         B フラウンホーファ回折(単一円形開口部)      
         Cフレネル回折(単一矩形開口部)                     
すなわち、xh=ξ、yh=η と置けば、フラウンホーファ回折単一矩形開口部について、次式のようにフーリエ変換で表されるので、このような扱いで論じられることが多い。
         
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