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錘の軌跡は、北半球中緯度の地点では、右図に示すコリオリの力(地表で見た速度方向から地球の自転角速度方向に回した
右ねじの進む方向に働く)のために、振り子の振動面(より正しくは振り子の折り返し点)が時計回りに回転します。
振動面が1周する時間Tは、緯度をλとすると、
T=24/ sinλ (時間)また、1時間当たりの回転角θは、
θ =15 sinλ (度)となります。
南北極ではλ=90°ですので T=24時間となり、 赤道ではλ=0°ですので T=∞ すなわち回転しません。 国立科学博物館のフーコーの振り子では、λ=36°ですので θ=約9度/Hr、T=約41時間となります。
何故このようなことが言えるかは、次のように考えると理解できると思います。南北極ではその地平面に描いた(x、y)座標は地球の半径 方向のz座標の周りを24時間で1周します。従い(x、y)面内のいかなる振動も24時間で1周することになります。赤道では(x、y)座標 はz軸の周りには回転しませんから振動も回転しません。中緯度ではz軸周りの回転速度が地球自転速度の1/sinλ倍で回転するので 振動は24時間/sinλで回転するのです。
このように、Tやθは振り子の大きさや振れ方とは全く関係がありません。しかしどこのフーコーの振り子も糸は長く錘が大きいのは何故で しょうか?
フーコーの振り子では振動面の回転が実感できる必要があります。そのためには、@振り子が長く振れ続けること A回転角度の違いを 認識できることが重要で、後者のためには、(a)床に描いた分度器の円が大きいこと (b)錘は床面に沿ってゆっくり振れることが必要です。 糸を長くすることは、これらすべての条件に有利に働きます。しかし、振り子の減衰の面からは糸を長くしただけでは十分とは言えないので、 より減衰を小さくするために錘の重さをも大きくするのです。
現実には、糸の長さは建物の高さ一杯にし、錘を(糸の強度に対し)極力重くしているのです。
、
しかし、いずれの場合も、1周期での折り返し点の回転角θ(=2πΩsinλ/ω、Ω:地球角速度、ω:振り子角速度、λ:緯度)は一定となります。
また、初速=0の時の緯度による振れ方の違いは以下のようになります。赤道では振動面が回転しない状態を示しています。
[U] フーコーの振り子のさまざまな振れ方
振れ方は、最初の錘の離し方により、振り子の静止時の点(中心)の右を通過したり左を通過したりします。適切な横方向の速度を与えて離すと
中心を通過するようになります。また、左(西)側への初速を与えた場合は必ず進行方向に対し常に右へ右へとそれる(北半球の場合)ようになります。
<下図は、フーコーの振り子の近似方程式の解析解
を用いて描いた。>
<自転角速度Ωは実際の400倍で計算して、振れ方を誇張して表現した状態となっている。>
厳密方程式をルンゲクッタ法で解くと以下のような図となり、細部は、近似方程式(遠心力無視 & 振れ角微小)の解とはやや異なります。
実振り子(緯度90度) 左図:横方向1000倍拡大 右図:縦横等倍 <青:地平面投影> <赤:鉛直垂直面投影> |
実振り子(緯度36度) L=67m θ0=20° 振動の北側では、錘の速度はΩの方向である水平方向より上向きとなるのでコリオリの力は逆向きとなり、図のように左にそれて丸みを帯びた軌跡となる。 |
実振り子(緯度0度) 南半球では進行方向から左にそれる筈だが、赤道上の振り子を南から離すと、錘の速度はΩの方向である水平方向より下向きとなるのでコリオリの力は逆向きとなり、図のように右にそれる状態から始動する。 |
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モデル地球の振り子(緯度90度) <青:地平面投影> <赤:鉛直垂直面投影> |
モデル地球の振り子(緯度36度) R=1m L=0.1m θ0=20° Ω=2rad/s g=9.83m/s2 (λ=36°のときは遠心力のため鉛直線からの振れ角 : θ0' =7.3°) |
モデル地球の振り子(緯度0度) |
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[V] フーコーの振り子の軌跡とサイクロイド
横方向の速度を与えずに振らせる(初速=0)時、振り子(Ω:地球角速度、ω:振り子角速度、λ:緯度)の軌跡(左図)は内サイロイド曲線(右図)となります。
半径aの円の内側を半径bの円が滑らずに回転するとき、円bに固定された点P
の軌跡を内サイクロイド曲線といい、図のような座標をとると、
と表されるが、フーコーの振り子の近似方程式の解析解
に初期条件(x=r0,y=0,vx=0,vy=0)を入れると、内サイクロイド曲線の式と同じになり、
ここに示した半径a,bの2円の成す内サイクロイド曲線は、フーコーの振り子の軌跡そのものです。
このように初速=0のフーコーの振り子の包絡線は、2つの円となり、最小円の半径cは最大円の半径aのΩ’/ω倍となります。
国立博物館の振り子だと、c=0.1mm程度で最小円は知覚できないほど小さく、中心を通るかの如くに見えるはずです。そうでなければ、最初に左右に振られていることになります。
また、円盤上の中心から半径方向に向かったボール(赤)の場合は、回転に伴う速度は0であるから、より単純に理解できると思う。
以上が、コリオリの力の本質である。
今度は、上の円盤を北極に置き、円盤回転方向と逆向き同等の速度を与える場合を考えよう。この場合、上図青の直線は
真上を向くので、振り子ならば円盤の外から見て(x,y)座標のy軸上のみを動くことは理解できると思う。即ち振り子の振動面は
固定されたままで回転しない。一方円盤上から見ると振り子は中心を必ず通るが振動面は回転し、円盤が1周すると元の振
動面に一致することになる。従い円盤から見た振り子の振動面が1周する時間が、円盤の1周する時間に等しいことは明らかであろう。
これが、北極に置いたフーコーの振り子の振動面が1周する時間が24時間であることを説明している。
この釣り合い点、すなわち鉛直線からの変位 x' として、x' = x-x0なる置換を行い、x' を x と置き直すと、以下の近似方程式を得る。
上記方程式の解は複素数(積分定数Cも複素数)であるので、C1=m1+in1、C2=m2+in2とおいて、
オイラーの公式 exp(iθ)=cos(θ)+i sin(θ)を用いて上記解の右辺を展開し、実数部と虚数部を比較することで、以下の実数解が得られる。
(c) フーコーの振り子/振り子の周期と軌跡
フーコーの振り子の振動の周期Tosil、振動面の周期Trotについては、複素数解
ξ = e-iΩ’t(C1eiωt+C2e-iωt)より、直ちに
<詳細解析>
近似解は複素平面ξ(x,y)で表されているが、今振り子が右図Sの位置からスタートし、円周方向の速度がv0である時、スタート位置から角速度Ω'で
時計回りに回る複素平面ξ'(x',y')では、どのような軌跡を描くかを考えよう。
すなわち、回転する複素平面ξ'で軌跡を見れば、右図のように、Ωや初期条件に関係なく、いつも一定の楕円軌跡(周期ω)を描くことが分かる。このことから、以下の事柄が分かる。
W-(4)に示した方程式は遠心力も考慮に入れた厳密な式であるが、これをルンゲクッタ法を用いて数値的に解く方法を以下に説明しよう。
単純なルンゲクッタ法(RK4)または単純な差分法では、始動から短時間の間は、錘の軌跡や振動面の回転角は正しいが、或る程度の時間が経過すると特に
周期誤差が大きくなる。より精度高く解を求めるには、より高度な数値計算法を用いなければならない。 [W] フーコーの振り子の本質/図解説明
北半球における初速=0でのフーコーの振り子は、右へ右へとそれることは上に示したが、その本質は、運動力学的には
コリオリの力として説明されるが、直感的には下図を見れば明らかであろう。
回転する円盤上の下端部から中心に向かって投げられたボール(青)は、円盤との摩擦がな
いとすると一定速度で動く。円盤の外から見れば、円盤の回転速度があるので、中心に向
かわず、右斜めの方向(青線)に直線的に進む。今ある時刻にボールが白抜き青丸に来た時、
円盤に固定した座標は(x,y)から破線で示す(x',y')の位置まで角度θだけ回転する。
ボールが円盤上に固定した座標(x',y')のy'軸の負の方向から角度φだけ進んでいるとすると、
図で分かるように、φは180度を越えない。y軸の負の方向から角度φだけ進めた位置(塗りつ
ぶし青丸)は、円盤上から見た(円盤上に座標(x,y)を固定したとしたときの)ボールの位置となる。
φが180度以下であるからボールはy軸の右側にある、即ちボールは進行方向に対し右へ右へと
進むこととなる。
[X] フーコーの振り子運動解析
(1) 基本物理法則
使用する物理法則は、以下のニュートンの第2法則と、重力の経験式のみです。
(1)
(2) 回転座標系(*)と絶対座標系 <詳細はこちら>
回転座標系(*)での相対位置r*、相対速度v*、相対加速度a*と、絶対系のそれらr、v、aとは、回転座標系(*)の原点の絶対系座標での位置、速度、加速度を
r0、v0、a0とすると、以下の関係にある。
<位置ベクトル>
<速度ベクトル>
<加速度ベクトル>
(2)
(3) 回転系での運動方程式
式(1)と式(2)より、回転系での運動方程式が得られる。 この式に見られるように、回転系では、コリオリの力・遠心力を考慮する必要がある。
(3)
(慣性力)コリオリの力 遠心力
慣性力-ma0は、座標系(*)の原点が絶対座標系の原点から離れて回転する場合、地球自転の遠心力として作用します。(次節参照)
コリオリの力2mv*×Ωはベクトルで、その方向は速度ベクトルv*から角速度ベクトルΩに回した右ねじの進む方向で、双方のベクトルに直角に作用します。
(4) フーコーの振り子の運動方程式
フーコーの振り子を考える場合、自転速度は一定であるから、
(4)
今、回転座標の原点O' を(経度α、緯度λ)にとり、経度に沿って南方向にi*、緯度に沿って東方向にj*、地球の半径方向に沿って外側にk*をとると、自転各速度ωは、
(5)
錘に作用する力Fは、重力mg と 糸の張力T であり、振り子の長さをLとすると、
(6)
地球の原点Oと回転座標の原点O' との距離 r0は、それぞれの座標(i,j,k)、(i*,j*,k*)に対し、地球の半径をRとすると、
この4式から、加速度a0は、r0を2回微分して、
(7)
また、回転座標での原点O' からの距離 r*および速度v*・加速度a*は、
(8)
(9)
(10)
式(4)〜式(9)を式(3)に代入し、ベクトル公式ax(bxc)=(a・c)b-(a・b)cを用いて計算し、式(10)と比較すると、最終的に次式の運動方程式を得る。
但し、
(5) フーコーの振り子の運動方程式の近似解
(a) フーコーの振り子/近似方程式と近似解
前説 (4)の運動方程式において、座標系(*)の原点回りの回転に起因する遠心力Ω×(r*×Ω)すなわちΩ2x,Ω2y,Ω2z
を含む項は他に比し極めて小さいから、これらを無視すると、
更に、フーコーの振り子のように、振れ角が小さい場合(必ずしもLが長い必要性を言っている訳ではない)は、dx/dt に比しdz/dt も極めて小さく、
また(T/mL)z に比しΩ(dy/dt)は十分小さいので、これらを無視すると、
ここで、振り子の静止状態(x0, y0, z0)での釣り合いを考えると、速度・加速度とも 0 であるから、
とおいて、
これらと、L2=x2+y2+z2から
南北極ではx0=0すなわち鉛直線方向は地球の半径方向に同じで、緯度36度では、その傾きは約0.01°(L=19.5mなら、x0は約3mm)である。
この第3式においては、振れ角が小さい場合z=L、d2/dt2=0と近似できるので、G=G0=ω2と書き直して
目的の近似方程式として、以下の式を得る。
この連立方程式の解法は種々あるが、ここでは複素数 ξ=x+iyを導入し、上記第2式に i を掛けて和をとると、
この微分方程式のLaplase変換で得られる2次方程式 の解
を用ると ξ=C1exp(s1t)+C2exp(s2t)であるから、
ここでもまた、Ω'/ω<<1であるから、ω' =ω と書けて、方程式の解として次式を得る。
< 複素数解>
<複素数解>
<実数解>
<実数解>
ここに、(m1,n1)、(m2,n2)は、初期条件を、t=0で
とすると、
最終的な解として示した式中のω は正確に表現すると、以下のような式で表されることに注意しなければならない。
であることが分かる。また、振動1周期あたりの回転角刄ニについては、振動面が1回転する間に振り子はn=Trot/Tosil回だけ振動するから、
その半周期での回転角は、
となります。
角度関係を 時間・度を単位として表現すると、 Ω’=(360/24)sinλ <度/Hr>であるから、振動面の回転周期Trotおよび
1時間あたりの振動面の回転角θrotは
<時間/1周>
<度/時間>
この場合、ξ とξ'の関係は、Sのx軸からの角度をθとすると、
であるから、近似解は次のように書き換えられる。
初期値は、円周半径をr0として、ξ0=x0+iy0=r0eθ、初期速度
(dξ/dt)0=vx0+ivy0=iv0eiθであるから、
ξ' を微分して、この初期値と比較すると、
この2式よりC1、C2を求め、v0=r0(dθ/dt)0とおき直して、整理すると、ξ' は
ξ'=x'+iy'であるから、この2式からωtを消去して、
@ 初速(dθ/dt)0や初期位置に関係なく、角速度Ω' で回転する座標軸で見ると、すべて楕円軌道を描く。
従い、地上固定座標で見ると、折り返し後の軌跡はいつも同じである。
A 軌跡の中心側の包絡線は、半径r0{Ω’+(dθ/dt)0}/ωの円となる。
B 初速(dθ/dt)0=-Ω' の場合は、軌跡は中心を通り、回転する座標軸では直線となる。
C 初速(dθ/dt)0=0 の場合は、軌跡は内サイクロイド曲線となる。
D フーコーの振り子の振動面が1回転する時間と考えたのは、厳密に言えば、この複素平面 ξ'が 1回転する
時間のことである。
この平面の回転速度はΩ'であったから、1回転すなわち2πする時間TはT=2π/Ω'であることが分かる。
(6) フーコーの振り子の運動方程式の厳密解
(a) フーコーの振り子/による数値解
dx/dt=vx, d2x/dt2=dvx/dt を使って(4)を書き直すと、
張力Tを消去すると、
糸の長さL2=x2+y2+z2であるから、これを2回微分して、
この連立方程式を解いて
これらの3式と以下の3式、合計6式を使用してルンゲクッタ法または差分法で解けば、厳密数値解が得られる。
張力Tは、次式で得られる。
1時間でも相当減衰し、国立科学博物館のフーコーの振り子は、支点の摩擦の影響をも概算すると、1時間後には70%程度まで減衰する。 (現実に国立科学博物館のフーコーの振り子は約1時間
ごとに振りなおされている。) [Y] 補足 : 振り子の減衰
球体の空気抵抗Dは、空気の密度ρa・速度v・断面積Sとして、次のような速度の2乗に比例する経験式で表されます。
その比例係数Cd は抵抗係数と呼ばれるもので、レイノルズ数Re=d・v/ν (d:代表寸法で球の場合直径、ν:動粘性係数)を用い、
この空気抵抗を取り込むと、長さL、質量m( 密度ρ)の振り子の運動方程式は
空気の比重をγ (γ=ρg)とすると、m=(4/3)π(d/2)3ρ、v=L・dθ/dt であるから、
この式から、直ちに錘の直径dが大きいすなわち重いほど空気抵抗の寄与は少なく、減衰が小さいことが分かる。
また、糸の長さLに関しても、長いほど 空気抵抗の寄与は少ないことが、次のように説明できる。すなわち振れ幅bを一定として考えると、エネルギー保存則より、最下点の速度v0は、
これから、振動の全工程でLが大きいほど速度vが小さいすなわち空気抵抗の寄与が少ないと言える。
実際に、上の方程式で、Cd(Re)<≒0.5>を考慮して、数値計算したものが下図であるが、結果は錘が重いほうが、長さが長い方が、減衰が小さいことを示している。
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